KHE国際特許事務所
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基本特許に関連する周辺特許の取得による事業の成功

大企業である素材メーカA社は電子部品部材用途向の金属/樹脂複合材(積層シート)を開発して、その基本特許を取得した。本複合材料の、優れた特性から有力加工業者や部品メーカ、エンドユーザ等と幅広い用途の共同開発も積極的に行うとともに、本複合材料の加工技術、用途・応用技術について特許出願を単独及び共同で行い、基本特許と数多くの周辺特許について特許権を取得した。併せて本複合材料の商品名について商標登録を受け、国内国外において本複合材料のブランド名称として知名度の向上を図った。その結果、急速に経済発展を始めたアジア各国において本技術分野でのオンリーワン商品として認識されるようになり、素材メーカAの戦略商品となった。

A社の成功の原因

基本特許を核に材料用途分野の会社と共同開発を進め、事業展開に合わせて、バリエーション発明について特許権取得することで、広範囲な特許により保護された競争力の高い製品を市場に投入することができた。本製品の商品名について商標登録を受け、著名化することにより市場を席捲することができ、A社の代表商品としてビジネス戦略に大きく貢献した。

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バリエーション発明の出願を怠ったために生じた失敗

半導体デバイスの回路の構成に関する基本特許Pを有している会社Aに、競合会社Bは特許実施料を支払って半導体デバイスの製造をしていた。それと同時、B社はその構造を含むバリエーション発明について多くの特許出願をし特許権を得ていた。A社は、基本特許権が切れた途端、A社が製造する半導体デバイスについて過去にさかのぼってB社から多額の実施料の支払いを要求された。

A社の失敗の原因

基本発明について特許を有していても、バリエーション発明についても更に特許権を取得しておく必要がある。優位な特許を持っていても、進歩の速い技術分野にあっては常に関連する技術の出願は必要である。

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周辺特許の重要性の認識を欠いたことによる失敗

大企業である素材メーカA社は、他社に先駆けて高機能樹脂フィルムの製造技術の開発に成功し、その後、同フィルムの用途開拓を行い、そのフィルム材料の特性を活かした3つの用途分野で、当該フィルムの製造販売の事業準備をした。しかし、その用途技術については新規性及び進歩性の観点から他社が特許権を得るのは困難と安易に判断していため、他社技術の調査、他社技術に対する対抗及び回避技術の開発を行わなかった。事業開始後、一つの用途分野では、その用途発明についてはA社の競合メーカであるB社が特許を保有し、後発的にその用途分野で本フィルムを供給する計画を持っていることが判明した。そのため、A社製のフィルムの品質が優位にも拘わらず、当該分野での事業を断念せざるを得なかった。

A社の問題点

特許権取得が困難と予想されても、周辺技術の権利化を検討すべきであった。そうすれば、他社の特許権に対して、早期に技術上及び事業上の対策を立てることができた。特に、画期的な特性を有する材料である場合には用途発明の開発と特許権の取得、他社特許の調査と対抗技術の特許化を通じて幅広い権利を獲得すべきであった。

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技術を理解しない安易な翻訳により生じた失敗

世界的な家電メーカA社はDVDレコーダのデータ転送の基本特許についてPCT出願をして主要国で特許権Pを得た。しかし、日本国だけは日本の大手家電メーカB社の通信技術の特許発明を引用してA社の出願は新規性欠如を理由に拒絶された。A社はこれを不服として、拒絶査定不服審判を請求したが認められなかった。元のPCT出願は英語で記載されており、日本出願の日本語翻訳においては原文の技術用語とその技術表現が不正確であり、拒絶理由通知に対する補正においても公知技術に用いられている表現を用いて記載していた。そのため、新規性違反を解消できなかった。その結果、A社は特許権Pに基づくDVDの開発についていてB社に技術提携を要請することができなくなった。

A社の失敗の原因

A社の発明者は日本語が読めないため、日本語の明細書の内容が理解できなかった。一方、日本語翻訳を作成した日本の代理人は技術の理解が不十分であった。また、補正内容について発明者と代理人の適切なコミュニケーションができていなかった。

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日本語翻訳文の不明確による失敗

産業用機械装置の製造A社は、ソフトウェアアルゴリズムに特徴を有する機械保全システムの発明をヨーロッパ特許庁に英語で出願し、その後ヨーロッパ9ヶ国で特許権の登録を受けた。ヨーロッパ出願を基礎に日本にも出願した。明細書にはアルゴリズムの根拠、ソフトウェアの機能、ハードウェアの動作が詳細に記載された。しかし、日本語に翻訳された日本出願の書面の内容からは「複数の公知のハードウェアを組み合わせて、数学アルゴリズムを単に付加した発明である」として産業上利用できる発明でない及び進歩性違反であるとの理由により出願が拒絶査定を受けた。

A社の失敗の原因

英語の原文にあったコンピュータソフトウェアとハードウェアの連携の技術的な意義は、日本語の翻訳文では明確に記述されず不明であった。これに加えて、日本の代理人は、本発明のシステムの技術的な意義を明確にする適切な補正と意見書を提出できなかったため、拒絶理由を解消することができなかった。

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安易に機能的表現をしたことにより生じた失敗

半導体製造装置の製造会社Aは、現場技術に基づく新たな発明について特許権Pを得た。その後、その技術を学会発表し、どの会社もその新技術を含む装置を使用するに至った。そこで、A社はその新技術を実施している競合会社Bに実施料の支払いを要求した。A社の発明者は、その発明について汎用的に権利を主張できると考えて機能的表現でクレームを記載していた。B社は、その新技術についてそのような機能を使用していないことを明らかにするために、その機能を表現する現場用語を変更することにした。その結果、A社の要求は、特許権Pに係る発明は実施していないとして、B社のみなら他社においても拒否され、A社は実施料を得ることができなった。

A社の失敗の原因

発明を安易に機能的表現すると、権利の有効性が失われることがある。本質的な技術の理解に欠いて記載したクレームでは、侵害者が用語を変更するだけで侵害を追及できなくなる。